「まちきゃん」の ものがたり
ここでばったり出くわしたらいいのに。
そして、いま泣いてしまった理由を伝えられたらいいのに。
見つからないように。
知られないように。
それと同じくらい、以上に、目の前に現れたらいいのにって思った。
なぜ私は、この道をあちら側に曲がらずにいるのだ・・・
なぜ、あの家にいかないのだ・・・
改札を出て、外に出てもマスクを外せなかった。
マスクのせいで息が苦しいのかどうか、わからない。
あれ以来はじめて、降りる駅を間違えた。
この駅、この道、この明るさ、このお店。
知っているのに、ちょっと迷った。
なんか、これまでで今が一番、思い出が色濃くなっている。
これだけが入っている箱があるんだ。
それは、何にも影響されないんだよ。
たとえ私自身でも、その箱に他のものを入れることはできないの。
この箱は、この箱。大切な箱。
箱、ちょっとなくなったかと思ってた。
というより、、何か、見えなくなる扉の向こうにしまわれたことにした。
のだけど、ちがうね。
なくなりはしないのだよ。
本棚に並べられたお気に入りの本のように、
読み終えた本も、これから読みたい本も、何度も読み返す本も、
おなじところに置かれていくよ。
そんな風なちょっぴり淡い私の気持ちがあることを、
隠さず、飛び越えず、「みる」ことにした。
そして、この気持ちを、しっかりと、肚に納めてみようと思った。
それは揺るぎない私の力になるだろうと思う。
※タイトルが意味不明かと思われるでしょうが、
私のような私じゃない人の、ものがたり。